八戸三社大祭法霊山龗神社オンライン渡御祭第九日目 〜大麻神職〜︎
令和三(2021)年 八戸三社大祭
法霊山龗神社オンライン渡御祭
第九日目 〜大麻神職〜︎
■ 写真1〜2:大麻神職(おおぬさしんしょく)
協力:八戸テレビ放送、白陽写真館
龗神社行列には、現在4人の神職が御神輿に随行していますが、その一番最初が大麻神職です。
過去の投稿にも書きましたが、大麻とは、お祓いの時に振られる、紙がフサフサついた棒などの事です。
7月1日の投稿動画では、ご覧の皆さんをお祓いするために神楽士が振っていたやつです。
大麻は、その名の通り本来麻が使われていますが、現在では和紙などがギザギザに切られたフサフサな感じのものをよく目にすると思います。
この様なものを祓串とも呼びます。
龗神社の大麻は、普段は紙と麻紐両方が使われていますが、写真の大麻は榊の枝に和紙と麻紐をつけたもので、龗神社行列で大麻所役の神職さんには、この大麻を使って頂くようにお願いしています。
装束に関しては、頭は立烏帽子、着装するのは狩衣で、特段色や柄には規定を設けておりませんが、浄衣(じょうえ、真っ白い無柄無紋の狩衣)ではないものを着装するようにしています。
これは決まりではなく別に浄衣でもいいのですが、毎年御奉仕頂いている小田の八幡宮さんと話して、やっぱ浄衣よりも雅な雰囲気がある方がいいんじゃない?という話になり、色付きの狩衣という事にしました。
但し、本来であれば大祭時に着装すべき袍(ほう)という正服を着装し、頭は立烏帽子ではなく冠とすべきなのでしょうが、タイトなスケジュールの中神職全員が、時間がかかり一人で着装できない正服とするには無理があり、狩衣としています。
また、神職は基本的に右手には笏を持ちますが、大麻神職だけは手に大麻を持ったまま行列し、笏は懐笏(かいしゃく、懐に笏をしまっている状態)した状態のまま行列する事になります。
この大麻ですが、辻毎に、つまり十字路毎に振られ、その場周辺を祓い清めます。
この、辻で、という部分は非常に重要だと私は想像しているのですが、禍つ神や悪しき者共などが辻から寄り来たる事の無いように辻毎に祓うのではないかと思っています。
7月5日の猿田彦の際に書きましたが、塞の神や岐神も、道又から悪しき者が入る事を防ぐとされますし、道の分岐に対する日本人の恐怖心というのがあるのではないかと思います。
子供向けの昔話や怪談話でも、山道の分岐がキーポイントになっている作品がありますが、これは上記の様な感性から成り立っている気がしています。
大麻の祓えは、伊邪那岐大神が黄泉の国から戻り、筑紫の日向の橘の小戸の憶原で禊祓給いし時に生り坐せる、四柱の祓戸大神です。お祓いの時の修祓(しゅばつ)と同じです。
この修祓を含む大麻祓いは、祓う対象の枉事罪穢れを祓ってください、という事ですが、その際に祓う所役、つまり行列での大麻神職は、枉事罪穢れに見舞われていない事が前提になります。
なので、大麻所役は事前に祓われている、という事になります。
神社神道では、穢れを忌み嫌う、という考えが大原則です。
穢れの最もは死ですが、血が出る事等も穢れとされます。
我々神職も、切り傷等で出血した状態にならない様、出張祭典などではバンドエイドや液体絆創膏を携帯したりします。
それ程に清め祓いの持つ意味は重要になりますので、龗神社行列関係者は出発前に発御祭祭典や出発式で修祓を受けて行列に臨みます。
逆に言えば、神社神道の原則的思考性において、修祓を受けずに神事行列に供奉する事は、何人たりとも出来ない、という事です。
さらに、これは現実問題難しいのですが、大麻神職が祓って以降、御神輿が通るまでの間に行列ルートを人が横切ってしまった場合などは、もう一度祓い直す必要があるとされます。
この様な事からも穢れと祓いの重要性がご理解頂けると思います。
もし今後行列を辻辺りでご覧になられる機会があれば、大麻神職が祓う際、約15度位頭を下げてお受けになられるのが良いでしょう。
以上、大麻神職のご紹介でした。