キツネ憑きによって身罷られた宮大工だった知り合いの弟さんの話
以前、キツネ関連で起きた話を書きますとコメント返しに書いていたので、投稿したいと思います。
私が東京のサラリーマン時代、関西に本店を置くゼネコンの社長に非常に可愛がられ、様々面倒を見てもらいました。
見た目はその筋の方かと思う程イカついですが、人柄は優しい方で今でもたまに連絡を取り合っています。
建設以外の事業も手掛けており、東京にもオフィスを構えなければ何かと大変という事で、東京本社を設立して、以降よく伺っていました。
ある時、大阪の自宅に家族を残したまま社長は単身東京に移り住む事になり、手伝いの為大阪のご自宅に伺った事があります。
これが個人の邸宅かと疑うほどのもの凄い建物だったので、風呂何個あるんですか?マジですごいっすね、羨ましいですなどと言ったところ、途端に表情が曇って
「そんなええもんやないわ」
という言葉が返ってきました。
この土地、競売で手に入れたそうなのですが、そこには元々残されていた建物があったそうです。
それを解体して建てようと、腕のいい宮大工だった社長のお兄さんに、解体から含めて全ての工事を発注したそうです。
弟の家を請け負うという事で、業者を全て手配、全部の現場に俺が立ち会うから任せておけ、と喜び張り切っていたと聞きます。
そして解体が始まった時、居間の壁を剥がすと、中からもう一つ壁が出てきたそうです。
どうやらそれが元々本来の壁だったものの、その部分だけ上に新しい壁を設置して元壁を隠した形になっていました。
その元壁には、一面に1体の龍が描かれていたそうです。
壊すのはマズいんじゃないか、そんな感じを受けて、壊さないように取り外してひとまずは保管しておこう、そう決めたのですが、外した壁の中からはお稲荷さんの眷属、キツネの彫り物が出てきしまいます。
不穏な雰囲気になり、誰も触りたがらなかったので、お兄さんが取り出して丁重に保管する事になったそうです。
その翌日、お兄さんは現場に現れませんでした。
その翌日も、さらにその翌日も。
東京出張中の社長に連絡が入り、急ぎ大阪に戻ってお兄さんの自宅へと向かうと、自宅にはいたものの様子の異変に気付きます。
他の職人に迷惑掛かってるから急ぎ現場に来てくれと、無理やり車に乗せて現場に向かったそうです。
そこで他の職人達は異様さに驚愕する事になります。
本人である事は分かるものの、表情が変容し目が吊り上がった様になっていたそうです。
そして、よくネコなんかが顔を掻くというか拭う時に取る仕草、手を丸めて招き猫の手のような形で顔をこするような仕草をしているのを見て、社長はじめ周りの誰もが唖然とし、言葉にならない恐怖を感じ始めます。
それ以降、お兄さんは仕事どころか生活もままならなかったそうで、精神的な病を疑い病院に連れて行ってもどうする事もできず。
ある日もう一度無理に現場へ連れて行くと、その場にしゃがみ込み、またもや猫の様に顔を掻いたかと思った途端、そのままピョーンと5メートル程前方に飛んだそうです。
走り幅跳びで5m飛んだならわかりますが、しゃがんだ状態から5m飛んだなら、最早人間業じゃありません。
その時、信じた事など一度もなかったものの、社長も流石に「キツネに憑かれたんだな」と落胆したと言っていました。
それから3ヶ月と経たないうちにお亡くなりになられたのだそうです。
死因も教えてもらいましたが、前までのストーリーが衝撃的で覚えておらず、事故か自殺かどちらかだったとは思いますが忘れてしまいました。
葬儀の日、怒りの矛先もわからず、悔しくてどうにもならなかった社長は、棺を蹴り飛ばし、兄の遺体の胸元を掴み、
「見てみぃ、このアホンダラが!真面目に生きて働いて結局このザマじゃボケが!!」
この後自分でも何を言っていたかわからないそうですが、散々怒鳴り散らして葬儀に参列せずに会場を後にした、と言っていました。
キツネにもいいキツネと祟るキツネがいるのかも知れませんが、龗神社のキツネの石像をお祓いして御霊抜きし、処分を依頼した業者全てに
「おキツネさんはちょっと無理です。」
と断られたので、業者さんでも様々な経験があるようです。
そして手前に描かれていた龍、あれは後ろのキツネの抑えで描かれていたのでしょうか。
私には何も分からぬものの、私自身について回っていると言われた小狐3体は可愛らしく楽しそうに遊んでるって事なので、安心しています。
以上、嘘のようなホントの話でした。