神職は拝み屋さんや霊能者さんとは役割が違うというお話

5日程前に三浦建設工業さんの安全祈願祭の投稿で、宗教と神道、主に家庭祭祀について書きましたが、今回は神職の役割は何なのか?という側面からのお話です。

今日神社に御祈祷で来られた方とのお話です。

この方は、就寝後不定期に襲ってくる胸や腹部の痛みに苦しみ、病院で精密検査を受けたものの全く異常が見られず、2人の別々の知り合いから龗神社でお祓いを受けた方がいいと勧められて来たそうです。その痛みが発生するたび、家族親族や近しい知人の不幸や災難が必ずと言っていいほど起きるそうで、どうしたら良いものかと悩んでいるとの事でした。

考えた末こういう方向の祝詞がいいだろうと思ったものを奏上し、様子を見てもらう事にしました。

今回の場合、私が神職として果たす役割はその願意を神に伝えて御神徳を戴けるように祈る、というものです。神の啓示を聞いて願主に伝えたり、厄災の元凶となっているかも知れない霊現象的なものを祓い退ける、というような事では決してありません。

霊現象のような事の相談は毎年十数件必ずあるのですが、何が取り憑いていますか?とか、災いの元となる原因は何でしょうか?とかの質問を受ける事が良くあります。

お困りの方々がそう聞いてくる気持ちは痛い程わかりますが、それは霊能者の方の役割ではないかと思います。

少なくとも神職はそういう役割ではなく、願いを伝えて御神威の発揚を祈る、という役割だと思っています。

地鎮祭を始めとする出向型の祭典を含め、私も年に数百と御祈祷をしていますので、正直言えば中には様々な経験をする事も出てきます。また、御祈祷のおかげで霊障がピタッと止んだ等と言って、身に余るほどの御礼を頂いた事も何度もあります。

でも、かと言って私自身はそういった類のものが見聞きできる訳ではなく、空気感が変だとか、インスピレーション的に感じた事が事実だったとか、そういった感じの事であり、気のせいや偶然と言えてしまうレベルの話です。理屈に合わないなぁという事もありますが、偶然が重なったと理解できなくもない、と考えるようにしています。

先に述べた通り、霊現象を見たり聞いたり、又はその意味を理解したりなどは霊能者さんの役割で、御祈祷においての神職が果たすべき役割は、人から神へ向けて願いを伝え、御神威の発揚を願うのみです。

また、イタコさんなどをはじめとする拝み屋さんは、神などの声を聞き受けて、それを人に向けて伝える、という役割かと思います。

だから神職と霊能者と拝み屋は、持つべき役割が違うという事だと思います。

神社での祈願とは、人の都合を優先した、ある意味一方通行だからこそ可能な行為かなと思います。そもそも神社も、その御祭神の意思に関わり無くその場に神を鎮め祀る禁足施設と民俗学者の一部は言っていますし、本来の神社神道の原点を考えればそういうものなのかも知れません。

神の声が聞こえる方からすれば、神の思いはそうじゃないんだとなるかも知れませんが、要はその思いに寄り添うのではなく、対価を差し出す代わりに人に寄り添って願いを聞き届けてくれと一方向性のやり取りをするのが神職の役割、と考えています。

もし交通安全の祈願を伝えている最中、神が「気に食わないから嫌だ、そんな願いなんて聞きたくない。」と言ってきたとしたら、わかりましたとは言えませんし、その場でどうしたら聞き届けてくれるのかという交渉事を始めるわけにもいきません。

だから神職は、そのような特異な能力を持ち合わせる必要は無いのだと思います。

以上は私の個人的な見解です。

そもそもこういう事を考える事自体が神職の役割ではないかも知れませんが、あくまで個人の考えなので、まぁいいかな、と思って書いてみました。

%year%%monthnum%%day% 法霊山龗神社instagramからの投稿