八戸三社大祭法霊山龗神社オンライン渡御祭第二十三日目 〜龍蛇神幟旗・氏子総代及び氏子町内会長〜︎
令和三(2021)年 八戸三社大祭
法霊山龗神社オンライン渡御祭
第二十三日目 〜龍蛇神幟旗・氏子総代及び氏子町内会長〜︎
■ 写真1〜2:龍蛇神(りゅうじゃしん)幟旗︎
■ 写真3:総代・町内会長
協力:八戸テレビ放送、白陽写真館
御神輿直後に掲げられる幟旗が「龍蛇神(りゅうじゃしん)」です。
今回は行列の紹介という事で、龍神については今年3月2日の投稿をご覧ください。
そして、龍蛇神幟旗は必ず忘れずに出すように言い伝えられていますが、行列に存在する意味はわかりません。
そこで龍、特段蛇に関して少し書きます。
水の神とされる龍神と蛇は、よく同一と見る向きがあります。
理由は様々ですが、蛇が水辺を好む生態である事、水田を守護する神としての蛇信仰が存在する事などから、水神の性質において同一に看做される文化が発生したという一説が存在します。
また蛇は、古語では「カカ」「カガチ」「カガシ」「ハハ」「ウカ」「ミズチ」などと言われます。
例えば鏡は蛇身(見)でカガミ、案山子(かかし)は蛇足でカカシなど、民俗学の見地で言えば蛇にまつわるとされるものは多数あります。
ちなみに、カカシは久延彦という神です。
またウカといえば、稲荷神社等の祭神である宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)のウカは蛇の意味とされます。
お稲荷さんはキツネが神様と勘違いしている方も多いようですが、実態は蛇神や鉄を神格化したものと言われ、キツネは宇迦之御魂大神の神使、つまり使いの獣であり神ではありません。
また天照大御神の別名と書紀にある大日孁貴(おおひるめのむち)は、海面を漂うようにうねり進んでやってきた神等と書かれ、ヒルメとは蛇身の意味である、とする話もある程です。
日本の神話、神々、国史等において、また現代の我々の生活や習俗においても、蛇の存在は切っても切り離せない部分があります。
日本の龍神信仰は、そもそも龍ではなくて蛇が原点で、龍と蛇を比定した結果、と言っても過言では無いと思います。
神道の原始信仰の形を今に伝える奈良県の大神神社の神、大物主さんはその姿が蛇であったと記紀にあります。
また八戸市の蕪嶋神社さんなどで祀られる、弁財天と比定される市杵島姫さんも、蛇の姿で海面をうねる様に這い進んだ等と伝わり、その本質は蛇であると伝えるものがあります。
ちなみに弁財天は実は風俗嬢の為の守り神であるなど、民俗学的秘密に関しては、今年4月24日、25日、28日に書いた記事をご参照ください。
この様に、蛇が関係する神は非常に多く、それが龍と同一視されるようになった事で多方面にわたり龍蛇神は信仰されます。
この様な龍蛇神の幟旗がどうしてあるのか気になるところです。
龍蛇神は見る限りでは出雲や諏訪の神、つまり出雲系の神々に関係深いと見られますが、そちらとの関係性は聞いておりません。
ただ実在の人物であった法霊大明神は、熊野などで修験道の修行にあたった人物と伝わるので、まさに出雲系の中枢で修行したわけですので無関係とは言いませんが、だからと言って龍蛇神と関係を説明できるかと言われれば出来ません。
あとは無理矢理ですが、関係ありそうなものは、境外末社の新川神社です。
御祭神が瀬織津姫で、別名機織姫(はたおりひめ)、又は棚機津姫(たなばたつひめ)と言い、龍蛇神と深く関わるという説があります。
この辺詳しく書くとキリがないのでやめますが、これくらいしか思い浮かぶ関係性が分かりませんので、いつか分かった時に書きます。
次に氏子総代及び町内会長です。装束は裃、頭は一文字笠で脇差を帯刀、足元は白鼻緒の草履です。
この方々は江戸時代の行列では乙名(おとな)と呼ばれ、町の有力者などが祭りの責任者、祭事委員としての立場で供奉する者でした。
現在では総代及び祭事総代、氏子町内会長が供奉しますが、地元の名士、町内の有力者という意味では江戸時代とその構成は変わりません。
龗神社行列は、この様な方々が中心となって支えているから成り立っています。
町内会長さんが裃を着て行列する姿を、お子さんお孫さんを始め家族の方々が見て、家庭で話題に上がる事で生まれる伝承があります。
また自身が参列する事で、神道の精神性や祭りのもたらす社会道徳などを感じ、伝承への思いを強くする事で生まれる歴史の道筋があります。
三社大祭は約300年、この伝承サイクルを繰り返してきた結果が今にあるだけです。
今後も大祭の精神性を通じて、我が国の素晴らしい国民性や麗しい感性を後世に紡ぎ、いつまでも日本人が日本人である為にも、多くの方々に参加頂く、又は見て頂く祭りとして伝承していきたいと考えています。