陸奥国八戸総鎮守 法霊山龗神社ブログ

青森県八戸市の総鎮守である法霊山龗神社で行われている日々の社務や神社や神道に関する豆知識、地鎮祭やお宮参り、七五三をはじめとしたお祝い事をブログでご紹介しています。

八戸三社大祭

八戸三社大祭法霊山龗神社オンライン渡御祭第十九日目 〜副斎主〜︎

令和三(2021)年 八戸三社大祭
法霊山龗神社オンライン渡御祭
第十九日目 〜副斎主〜︎

■ 写真1:副斎主(ふくさいしゅ)

四人の神職が随行する龗神社行列の3番目の神職が副斎主です。
ここ数年は私が務めています。

また副斎主は、龗神社の三社大祭祭典においては祓主(はらえぬし)を兼ねます。
祓主とは、修祓、つまり大麻祓いの際に祓詞(はらえことば)を奏上する神職を指します。

祓詞は聞いた事がある方が最も多い祝詞だと思います。

かけまくも かしこき いざなぎの おおかみ 〜
(中略)
〜 はらへたまい きよめたまへと まをすことを きこしめせと かしこみ かしこみも まをす

というやつです。

祓詞は、全ての神職が暗記している祝詞と言っても過言ではないでしょう。
正直神職の皆さんは別の事を考えながらでも奏上できるレベルだと思います。

余談ですが、神職として御祈祷の経験を積み重ね、段々慣れて来ると、ある時突然それはやって来ます。
暗記していたはずの祓詞が、ある時奏上中に頭から突然飛んでしまう現象です。

私の周りの神職さんは、高い割合で経験されています。
私も一度経験しました。

その時、多分脳の中では様々な記憶を一気に検索しているのでしょうか、他の祝詞の色々な言葉が浮かんでは消えていきました。
瞬時に祓詞の趣旨に則った言葉を選び、頭の中で即興作文して祝詞を繋いでいるうちに、飛んでいったはずの祓詞が戻ってきて、何とか改造版祓詞はおかしくない意味で奏上する事ができました。

もう二度と無い事を祈るほかありません。

とまぁ余談はこの程度にして話を戻します。では龗神社の場合は副斎主が祓主を兼ねているから、行列にも祓主として存在するのかというと、そうではありません。
ただの副斎主として行列内に存在しています。
御祭神に随行する神職の中の副斎主、というだけです。
つまり特記するような所役はありません。

その為、手に持つものも2番目の神職と同様に笏を持ちます。
ただ、装束が違います。

副斎主は、通常であれば正服である袍(ほう)というものを着装しますが、他の神職同様、袍は一人で着装できない為、龗神社では時間的に難しい事から正服を着装していません。

かと言って、副斎主は狩衣ではありません。

副斎主の装束は、頭には烏帽子ではなく冠、小直衣(このうし)という、狩衣とは仕立てが異なるものを着装しています。
小直衣の中には単(ひとえ)という、橙色のものを羽織り、袴の帯の中に挟み込んで止めます。
その上から小直衣を着けます。
これもやはり一人での着装は難しいのですが、そこまで時間がかかるものでは無いので、行列前でも着装が可能です。

龗神社では大祭時に着装する小直衣の柄は、神紋である「丸に橘」の紋が入ったもの、と決められています。
この様な時の為に、京都の装束店で紋入りの小直衣や狩衣を複数仕立ててもらいました。

最後に、副斎主直前の御散供箱におひねりなどを持って来た方が、納め終わった後に副斎主を合掌して拝んで行く、というのがよくあるのですが、副斎主は仏様ではなくて生きた人間ですので拝む必要はありません。

気になるのであれば、手を合わせて合掌したまま拝むという作法はお寺さんの作法で、神社神道にはありませんので、軽く頭を下げて会釈する程度で十分かと思います。

法霊山龗神社instagramからの投稿